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2011年05月11日

圏論の入門書

Lawvere and Schanuel, Conceptual mathematics: a first introduction to categories, Cambridge University Press

とても面白い圏論の入門書。

圏論に意義を感じるひとつの方法はホモトピーやホモロジーを通してというのがあると思うが、この本はまったく違うアプローチ。そもそも群の圏も位相空間の圏も出てこない。

それでは何の圏を扱うかといえば、集合の圏、自己射の圏、有向多重グラフの圏。これだけで勝負する。

関手については最後になってようやく出てくるという構成なので、圏論の本としては入門書以前と言えるかもしれないが、代わりに切断とレトラクション、始対象と終対象、積と余積などを例に普遍性や双対性について論じている。

それだけで一冊十分書く内容があるという所に圏論の奥深さと適用範囲の広さが現れていると思う。

最初の数十ページはまわりくどいようにも感じるが、読み進めるにつれて味が出てくる。初等的な数学的操作がきれいに抽象化されていくのは実に楽しい。

このような一般的な枠組みが二十世紀中葉になるまで明らかになっていなかったというのは驚くべきことだと思う。

ひょっとして数学にはまだ知られていないあざやかな基本構造、あるいは新しい視点がさらに眠っているのかもしれないとさえ思えてくる。

なお、ホモロジーから入る圏論の入門書としては谷村省吾「理工系のためのトポロジー・圏論・微分幾何」(サイエンス社)が素晴らしいと思う。限られた紙数でありながら、単体複体のホモロジーとde Rahmコホモロジーが直観的な形で説明され、それを通して圏論の意義が述べられている。

著者の谷村先生はかつての同僚の谷口さんの師匠とのことで、彼の研究室の本棚で知った。

Posted by taro at 2011年05月11日 21:33

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