面白い社会運動

 道を歩いていたら、すごいと思う活動に出会った。

 自転車で四条大橋を通り掛かった時のこと。
 橋のたもとで声を張り上げている、五十代くらいのおじさんがいた。

「ビッグ・イッシュー今月号でーす。一部、二百円でーす」

 寒空の下、クリアファイルに挟んだ薄い雑誌を掲げている。
 広報誌を握り締めて街角に立つ宗教団体に似ていないこともない。
 しかし、肩に掛かるゼッケンには、こう書かれていた。

「ホームレスの仕事をつくり自立を支援する The Big Issue」

 雑誌を売って、生活費を稼ぐということか?
 僕は立ち止まり、おじさんから話を聞いた。

「『ビッグ・イッシュー』って何ですか」
「雑誌です。一部二百円です。どうですか」

 薄いが、カラーだし、十ページ以上あるし、レイアウトもしっかりしている。
 つまり、同人誌のようなものではない。
 ちゃんとしたデザイナーや記者がいて、分業して作られている雑誌だ。

「二百円のうち、百十円が僕たちの収入になるんです」とおじさんは説明する。

 道路の反対側で販売していたおじさんもこちらに来て、補足した。
「1991年にイギリスで始まって。日本では昨年の十月から売っています。世界二十四カ国で販売しています。アフリカとか。アジアでは、日本が最初です」
 このおじさんの年は四十代後半くらいか。前歯が欠けて、二本しか残っていない。
「日本では何人くらいで販売しているんですか」
「京都で十三人。大阪が三十人ちょっと。東京が五十人くらいかな。むこうは規模が大きいから」

 本部は大阪の西成にあるらしい。
 興味深いのは、雑誌が完全に若者を対象年齢層に想定していることだ。
 メジャーなアーチストや映画俳優へのインタビューがある一方で、「若者とエイズ・エアポケット・ニッポンの、いま、そこにある危機」などといったシビアな記事も載っている。

 つまり、ホームレスが雑誌の販売によって生活費を得る一方で、社会啓発的なメディアも兼ねている。この側面から見ると、ホームレスのおじさんたちは社会啓発の尖兵として働いていることになる。

 この雑誌、途上国でも多く販売されているという。ボランティアでも寄付でもなく、情報による貧困層支援。

 古雑誌を拾い集めて売っているホームレスのおじさんを見かけることがあるが、それを世界規模のシステムに結び付けたといったところか。

 この仕組みを考えた人は、すごいと思う。

℃ Taro Tezuka (2004.1.18)
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